理事長挨拶

 

日本慢性看護学会 理事長 本庄恵子(日本赤十字看護大学) 日本慢性看護学会は、慢性看護の知の体系化をめざし、慢性看護の研究者の交流を支援するとともに、慢性看護提供システムに関する政策提言を行うことを目的として、2006年に設立されました。本学会は、この目的を達成するための取り組みを発展させつつあります。2020年度から、日本慢性看護学会誌のJ-stageへの搭載が始まり、投稿論文等の知見が広く世の中に公開されるようになりました。

 慢性看護の知の体系化としては、10周年記念事業の成果物として「10周年記念誌-慢性看護の知の体系化-」が公表されました。ここでは、「ウェル・ビーイング」「不確かさ」「セルフケア」「パートナーシップ」をコアコンセプトとする、慢性看護の概念図が提示されました。慢性病と共に生きる人を生活者として捉え、生まれてから亡くなるまでの長期スパンで、その人の主体性/もてる力を尊重し、ウェル・ビーイングに向けて支援することが慢性看護の核となるものとして示されています。今後、慢性病者をとりまく環境の変化もふまえながら、さらに慢性看護の知の体系化を進めていきたいと思います。

 慢性看護の研究者および実践家の交流の場として、学術集会での交流の他、2020年度から「CNSのひろば」を本学会のホームぺージに開設しました。慢性看護は、成人看護学、精神看護学、地域看護学、老年看護学、小児看護学、がん看護学などのあらゆる領域で、教育・研究・実践の取り組みがなされています。「CNSのひろば」が、領域を超えて慢性看護に関心を寄せる皆様をつなぐ場として発展していくことを願います。また、本学会は、慢性看護の教育・研究に携わる教育研究者と、高度実践看護師(専門看護師)や認定看護師などの慢性看護の実践に携わる人が集う学会でもあります。慢性看護を探求する教育研究者と実践者の交流と協働をさらに深化させることで、慢性看護の新たな知が創出されることを期待しています。

 そして、慢性看護提供システムに関する政策提言を行うことは、慢性の病いと共に生きる人たちに必要なケアを届けるためにも重要であると考えます。本学会には政策委員会があり、看保連等とも連携し、慢性看護に関する政策提言を行う活動に取り組んでいます。政策提言にあたっては、看護職者のみならず、多職種専門家の理解と協働が必要です。また、目的を同じくする他学会との連携も欠かせません。慢性的な病いと共に生きる人へのケアに関心を寄せる多くの専門家との交流や協働により、政策提言にむけた取り組みを一層発展させていきたいと思います。

 昨今のCOVID-19感染症の流行など、慢性病者をとりまく状況の複雑さや不確かさが増しています。一方で、このような状況は、遠隔診療など新たな支援を発展させるきっかけにもなりました。そして、不確かな状況にあっても、慢性的な病いと共に生きる人は、「こうありたい」という生活を送れるよう、もてる力を生かしながらセルフケアを実施しています。日本慢性看護学会では、慢性病者一人ひとりの「こうありたい」と願う生活やもてる力を大切にし、不確かさや複雑さが増す状況においてもしなやかに対応し、慢性看護の新たな知の創出に向けた努力を続けたいと思います。

 日本慢性看護学会がこれまで積み重ねてきた取り組みを一層発展させ、社会に貢献できるよう、皆様からご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします。

2021年4月1日 
日本慢性看護学会 
理事長 本庄恵子 
(日本赤十字看護大学)

【事務局】
〒150-0012 東京都渋谷区広尾4-1-3
日本赤十字看護大学内 日本慢性看護学会事務局
FAX:03-3409-0589
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